一人暮らしの自炊で、食材を余らせないためには
一人分の自炊で食材が余るのは、量の加減が下手だからだと思われがちですが、実際の原因は仕組みのほうにあります。レシピは四人分を前提に書かれていて、スーパーの食材も一世帯分のまとまりで売られています。この二つの仕組みに一人で立ち向かえば、どれだけ丁寧に買い物をしても、どれだけ気をつけて作っても、余りはほぼ構造的に生まれます。
レシピは、そもそもあなたのために書かれていない
レシピを四分の一に縮小する計算自体は難しくありません。難しいのは、その計算どおりに買えると仮定している点です。セロリ二本と書いてあっても、売り場には一束単位でしか置いていません。バターミルクを少々と言われても、パックは一リットル単位です。玉ねぎ半分と言われても、玉ねぎは半分では売っていません。一人分に正しく縮めたレシピでも、買い物のときはほとんどの材料をひとまとまり丸ごと買うことになります。「玉ねぎの四分の一」という商品は存在しないからです。余りは買い方の失敗ではなく、レシピの分量とスーパーの最小販売単位がぶつかった結果、毎回起きることなのです。
余り方には、大きく二つの形があります
1. 行き場のない残り物
レシピどおりに作ると、四分の三袋残ったほうれん草、ほとんど使わなかった一束のパクチー、大さじ二杯しか使わなかったヨーグルトの残りが出てきます。どれも傷んでいるわけでも、傷みかけているわけでもありません。ただ、次の行き先がないだけです。それを買う理由になったレシピはもう終わっていて、今週の献立の他のどれも、それを想定して書かれていないからです。
2. 同じ料理を四回食べる問題
逆の発想もあります。食材を余らせたくないからと、量を減らさずレシピどおりフルで作る方法です。すると同じ料理が四人前できて、食べるのは一人だけ、ということになります。最初の二回はまだいいのですが、三回目にはたいてい飽きてきて、四回目の分は冷蔵庫の奥でひっそり存在を忘れられ、結局捨てられます。無駄を出さないために作ったはずなのに、です。
「必要な分だけ買う」でも解決しない理由
いちばん理にかなって聞こえる答え——今日のレシピに必要な分だけ、多くも少なくもなく買う——は、逆方向から同じ壁にぶつかります。生鮮食品は、一食分だけの単位で売られてはいません。ほとんどの食材で、「必要な分だけ」は棚の上に選択肢として存在していないのです。まだ何も作っていない段階で、余りはすでに買い物のなかに織り込まれています。だとすれば目指すべきは「余りをゼロにする」ことではなく、余ることを前提に、その次の行き先をあらかじめ決めておくことです。
実際に効くのは、レシピどおりではなく小さな在庫として買うこと
効果があるのは、レシピを「完成させるべき指示書」ではなく「借りてくるアイデア集」として扱うことです。一人分の自炊で無駄を出さないためには、まず冷蔵庫にすでに開封してあるもの——半分残った玉ねぎ、切りかけの野菜、少し残ったソース——から考え始めて、それが今夜どんな料理になりうるかを問うほうが、先にレシピを決めてから材料をきっちり買いそろえるより効きます。この読み方をすれば、レシピが与えてくれるのは調理法と味の方向性であって、印刷された分量ひとつひとつを守る指示ではなくなります。実際、置き換えは見た目より簡単にできます。
冷凍庫は買いだめ用ではなく、小分け用に使う
同じ料理を四回食べる問題には、量を減らす以外の素直な解決策があります。買い物としてフルで作るほうが楽なら、フルで作ってかまいません。ただし余った分は、ひとつの容器にまとめて凍らせるのではなく、一食分ずつ分けて凍らせます。ひとつの容器にまとめて凍らせた料理は、解凍するときもほぼひとまとめで、結局また同じ料理を一回分食べることになります。同じ料理でも一食分ずつ別の容器に分けて凍らせれば、それぞれが別の晩の、まったく別の夕食になります。電子レンジで五分温めるだけで済み、昨日と同じ料理をもう一度食べる約束にはなりません。ここでの冷凍庫の役割は普段と逆で、食材を長持ちさせて引き延ばすためではなく、大きな一回分を一人が実際に食べきれる量へと分割し直すためのものです。
実際に効く習慣
- レシピを絶対の指示書ではなく、出発点として扱う。香味野菜を少なめにする、野菜を別のものに置き換える、ひとつ丸ごと省く——たいていの料理は、紙に書かれているよりずっと融通が利きます。
- 余りが出た瞬間に、その次の行き先を決める。四分の三袋のほうれん草は、冷蔵庫に戻すその一分のうちに行き先を決めます。明日の卵料理に使う、あるいは出汁用に冷凍しておく、など。三日後にもう一度考え直す問題にしないことです。
- 食べる分だけ小分けにして冷凍する。ひとつの鍋やトレーごとではなく、一食分ずつの容器で。大きな一回の調理が、同じ料理を四晩続けて食べることではなく、何通りもの別々の晩ごはんになります。
- 常備食材は一週間かけて少しずつ使う。玉ねぎひとつ、チーズひとかたまり、米一袋を、何回かに分けて少しずつ使うほうが、一回の料理で使い切ろうとするより、量をうまく吸収できます。
- レシピアプリのおすすめより、いちばん先に傷みそうなものを優先する。一人分の自炊では、これがとくに効きます。今夜何を作るかについて、張り合う相手の好みが存在しないからです。
これは Munch のレシピマッチングの考え方に近いものです。冷蔵庫に実際にある、すでに開封済みの食材をもとに、「あと何があれば作れるか」でレシピをグループ分けしているので、印刷された人数分ではなく、いま手元にあるものを基準に判断します。「4人分」と書かれた料理でも、そこにある食材で作れるなら、選択肢としてそのまま出てきます。誰か他の世帯の分量に合わせて、あらためて買い物をし直す必要はありません。
これは、食べる量を減らすとか、より注意深くなるという話ではありません。レシピの分量も、パッケージのサイズも、スーパーの最小販売単位も、そもそもあなたが養っている人数とは違う人数を前提に作られています。そのずれに対処するのは、量を加減する技術とは別の話です。余りがあることを前提にした計画を立てさえすれば、「一人分の自炊は無駄が多い」と言われがちな部分の多くは、実は食べた量とは関係がなかったことがわかります。