Munch家庭のキッチン管理

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硬くなったパンで何を作るか

台所の隅で数日経って、カチカチに乾いたパン。もう終わりに見えますが、「硬くなる」ことと「傷む」ことは原因からしてまったく別の現象です。本当に傷んだパンは内部までカビが広がっていて、例外なく丸ごと捨てるべきものです。一方、ただ硬くなっただけのパンは水分と内部構造が変わって乾いた状態になっているだけで、この乾いた質感を前提にした料理が実はいくつもあります。手元にあるのがどちらなのかを見分けられれば、答えは「捨てる」から「今夜これを作る」に変わります。

パンが硬くなる理由

パンが硬くなるのは、単に水分が抜けていくからだけではありません。それも一因ですが、もっと大きいのは「でんぷんの老化(retrogradation)」と呼ばれる現象です。焼いた直後は糊化してやわらかくなっていたでんぷん分子が、パンが冷めて時間が経つうちに、少しずつ元のような規則的で結晶に近い構造へと並び直していきます。この並び直しこそが、パンの中身を硬くし、皮を革のような食感に変える正体で、密閉した袋の中でも進みます。だから「密閉すれば硬くならない」わけではなく、乾燥は防げても老化そのものは止まりません。これはでんぷんの物理的な変化であって、何かが繁殖したり、有害なものを作り出したりしているわけではありません。硬くなったパンがそれでも食べられる理由は、まさにここにあります。

硬いだけなのか、本当に傷んでいるのか

見分け方さえ知っていれば区別は簡単で、しかもこの違いはとても重要です。対処がまったく逆になるからです。

  • 硬いだけ:硬くて乾いていて、皮が少し革っぽいことがあります。匂いはパンの匂いのままで、ただ薄いだけ。ふわふわした斑点や、緑・黒・白の斑、酸っぱい匂いやカビ臭さはありません。これは純粋に食感の問題で、食べて問題なく、むしろ焼きたてより料理に向いていることも多いです。
  • 本当に傷んでいる:目に見えるカビが一点でもあれば、その一点だけでなく丸ごと処分します。パンの中身は多孔質でスカスカなので、カビの菌糸は見えている範囲よりずっと奥まで伸びています。切り分ければ一部だけ食べられる硬いチーズとは違い、パンは一点の目に見えるカビが、ひと切れではなく一斤全体の処分を意味します。

まだカビが目に見えていなくても、カビ臭さや酸っぱい匂いがあれば、その感覚も信じていいものです。目に見えるようになる頃には、たいていしばらく前から進行しています。

まだそこまで進んでいなければ、蘇らせられる

硬くなったけれどまだきれいな一斤であれば、表面に水をくぐらせてから高温のオーブンで十分ほど焼くと、実際に効果があります。少なくとも数時間はもちます。皮の中で水が蒸気になり、でんぷんの構造を一時的にやわらかい状態へ戻すからです。ただしこれは時間を巻き戻すのではなく、一時しのぎです。翌日にはむしろ最初より早く硬くなるので、これから食べるパンに使う技であって、保存のための技ではありません。

実際に何を作るか

その段階を過ぎたパンは、妥協の材料ではありません。硬いパンのほうが焼きたてより向いている、という理由だけで成立している定番料理がいくつもあります。

  • クルトン。角切りにしてオイルと塩をまぶし、焼くか炒めるかしてカリッとさせます。焼きたてのパンでやるとべちゃっとしがちですが、硬いパンは水分が少ない分、きれいにカリカリになります。
  • パン粉。乾いたパンを砕くかすりおろせば、衣にも、とろみづけにも、ハンバーグやミートボールのつなぎにもなり、冷凍すれば数週間もちます。食べる気になれない端の部分を使い切るには、いちばん手っ取り早い方法です。
  • ブレッドプディング(甘くても、しょっぱくても)。定番中の定番なのは、乾いたパンが卵液を均一に吸い込み、焼きたてのパンのようにドロドロに崩れないからです。チーズやだし、野菜を使ったしょっぱい版も同じ原理で、デザートではなく立派な一食になります。
  • パンツァネッラ。ちぎった硬いパンをトマト、オイル、酢と和えて二十分ほど置くと、パンが汁を吸い込みつつペースト状にはならずに済みます。これはパンが最初から乾いていることが前提の料理です。
  • フレンチトースト。少し硬くなったスライスのほうが卵液の中で形を保ちやすく、焼きたての柔らかいパンよりフライパンに移す前に崩れにくいです。
  • パンのスープ。煮立てた野菜やトマトのスープにちぎって入れ、オイルを少し足すと、パンがスープをシチューに近いとろみへと変えます。パンの端と、週の終わりに残った野菜を同時に片づける料理です。
  • もう一度焼いてガーリッククラッカーに。硬くなったバゲットを薄く切り、オイルとにんにくを塗って焼けば、焼きたてのパンより歯ざわりのいいクラッカーになります。焼きたてで同じことをすると、中まではカリッと仕上がりません。

本当の解決策は冷凍室にある

硬くなる過程は冷蔵庫の中でも進み続けます。むしろ常温より冷蔵のほうが速いくらいです。低温はでんぷんの老化を早めるからです。冷凍室は別で、冷凍の温度ではこの過程がほぼ止まります。冷蔵庫の中で進み続ける別の「時計」を、冷凍が止めてしまうのと同じ理屈です。買った時点でスライスしてから冷凍しておけば、一斤まるごと解凍して硬くなる前に食べきろうと焦る必要はなく、一枚か二枚だけ取り出して凍ったまま焼けます。すでに硬くなり始めてから冷凍するものではなく、買ったその日に半分だけ冷凍してしまうことが、端っこが硬くなって余る問題そのものを防ぎます。後始末の手段ではなく、先回りの手段です。

パンは存在を忘れられがちな食品です。肉や乳製品のようにはっきりした消費期限が印字されていないからで、台所の隅の袋の中や棚の奥で、焼きたてから硬いパンへ、さらにカビへと、自分のペースで静かに進んでいきます。Munchは台所のほかのものと同じようにパンも記録します。どれだけ残っているか、どこに置いてあるか、入れてから何日経ったか。硬くなりかけの一斤が、それで何を作れるかという情報と一緒に目に入るようになり、捨てる以外の選択肢がなくなってから思い出す、ということがなくなります。