家にあるものを、また買ってしまうのはなぜ?
トマト缶が三つ棚にあるのは、あなたがだらしないからではありません。「もう家にあるかどうか」を確かめる必要があるその瞬間が、台所の棚の前に立っている瞬間ではなく、その二十分後、スーパーの棚の前で缶を手に取りながら記憶をたぐり寄せているその瞬間だから起きることです。答えがある場所と、答えが必要になる場所がずれている——問題はそれだけです。「もっとちゃんと覚えておく」でこれが解決した人は、いままで一人もいません。そもそも記憶力の問題ではないからです。
スーパーの棚の前が、いちばん向いていない場所
家にあるものについての記憶は、間違っているわけではありません。ただ、最初から古いのです。パスタ、しょうゆ、卵のように毎日触れるものは、意識して覚え直すことなく使われていくので、「たぶんある」という感覚は、事実というより習慣の名残でしかありません。それは本当かもしれませんし、三週間前の話かもしれません。蛍光灯の下、後ろに列ができかけているカゴを持ちながら、その習慣を事実に変換し直すのは無理があります。だからたいていの人は、より安全に感じるほうを選びます。買っておこう、切らすほうが二つあるより面倒だから、と。この一見もっともらしい選択が、年に何百回も繰り返された結果が、家にあるものの重複です。
重複はだいたいこの三か所から生まれる
1.「念のため」のストック
よく使うものが安くなっていたり、目についたりして、もう一つ買っておく。そのもう一つは、棚の奥、空いている場所に収まります。それ以降、記憶が追えているのは手前にあるほうだけです。手前が減ってくると、また「念のため」買い足す——気づけば奥に、誰も存在を覚えていないストックが二つ並んで静かに古くなっています。
2. 使いかけの瓶という死角
半分使った瓶は、満杯の瓶と同じようには記憶に残りません。「カレーペーストはある」は、いつのまにか「あるかもしれないし、空き瓶だけかもしれない」に変わります。事実に「かもしれない」がつくと、新しく買うことは重複には感じられず、むしろ念のための正しい判断に感じられます。それが重複だとはっきりするのは、家に帰って瓶が二本並んだあとです。
3. 共有の台所という死角
家族で暮らしていると、冷蔵庫が減っていることに気づく人と、今日買い物に行く人は、たいてい別人です。先週買い足した人と、いま棚の前に立っている人も、たいてい別人です。誰が悪いわけでもなく、「家に何があるか」という情報がそもそも複数の頭の中に分かれて存在していて、そのどれもが他の二つの最新状態を知らないだけなのです。
買い物リストがこれを解決しない理由
買い物リストは分かりやすい答えに見えますが、材料は記憶と同じものです。家を出る前に、印象だけで書いたもので、実際に棚を見ながら確かめたものではありません。リストは何を買うかを整えてくれますが、それを書いたときに頭の中にあった「たぶんある」が正しかったかどうかには、何もしてくれません。これは、この記事の前に扱った「続かない期限リマインダーアプリ」とまったく同じ形の問題です。すでに古くなりかけている情報に対して、もっと注意深くなってくれ、と頼む解決策は、いつも失敗します。
本当にこのズレを埋める方法
解決策は記憶力を上げることではありません。確認するタイミングを、決定の前に移すことです。あとになってからではなく、缶をまだ手に持っている、まさにその瞬間に答えが出るようにする。
- カゴに入れる前に確認する。買い物袋を開けたあとではなく。まだ「買わない」を選べる、その瞬間だけに意味があります。
- リストは、見ながら書いたものだけが役に立つ。前夜にソファで印象だけで書いたリストより、実際に棚を見て書いたリストのほうがずっと頼りになります。
- 家族で暮らしているなら、リストは自動で更新される必要があります。誰かが最後の一個を使った瞬間にリストが古くなるなら、結局また勘に戻っているだけです。
- 自分がよく買い重ねるものを把握しておく。調味料ひとつ、缶詰ひとつなど、誰にでも二つか三つ、よく重複する品目があります。そこだけは、これまで裏切られてきた習慣に任せず、意識して確認する価値があります。
これはそのまま、Munch が埋めようとしているズレでもあります。家族全員が同じ在庫を見ていて、何かを追加したり使ったりするたびにリアルタイムで反映されるので、買う前の確認は、スーパーの棚の前でスマホを十数秒見るだけで済みます。数キロ先の家の中を、勘で推測する必要がありません。
結局のところ、これは注意深さの話ではありません。「家にもうあるかどうか」という問いは、ほとんどの場合、答えのない場所で問われています。それに気づけば、やることははっきりしています。答えが実際にある場所で、その問いを問うことです。記憶が勘で答えを出そうとしている場所ではなく。