Munch家庭のキッチン管理

ホーム / ガイド

冷蔵庫の奥にあるものを忘れてしまうのはなぜ?

瓶を冷蔵庫の奥に押し込むとき、忘れるつもりで押し込む人はいません。買ってきたものを入れる場所をつくるために奥へ押しやられ、その瞬間から、それは日常的に意識にのぼる食材のリストから静かに外れていきます。だらしないからではなく、「からしがある」という感覚そのものが、よく触れるものについてしか更新され続けないからです。触れなくなったものは、実際にそこにあるかどうかとは関係なく、この記憶からそっと抜け落ちていきます。

「覚えている」には二種類ある

毎週使うからしと、八か月前に一度きりの料理のために買って以来触っていない調味料は、頭の中でまったく違う扱われ方をしています。前者は記憶というより習慣に近く、手が勝手に伸びて、使うたびに「今もある」と静かに上書きされます。後者は買った日に一度だけ記録され、それ以降まったく更新されていません。心理学ではこれを「再認」と「想起」の違いと呼びます。再認は、目にした瞬間に「これだ」とわかること。想起は、目の前に何もない状態から記憶だけで引っ張り出すことです。冷蔵庫の奥が常に試しているのは想起のほうで、しかもほとんど手助けをしてくれません。今見えていないものを思い出せと言われているようなもので、これは人がもっとも苦手とする種類の記憶です。

だからこそ、忘れられるものは家の定番食材であることがほとんどありません。牛乳、卵、バターといった主力の食材は使う頻度が高く、習慣という車線にずっと乗っていて、まず迷子になりません。取り残されるのは、一つの料理のためだけの調味料、一度しか作らなかった料理の残りのソース、きちんとした夕食のためにとっておいた上等なからしです。特別だからこそ取っておいた、そのこと自体が、冷蔵庫についての日常的な意識から外れる原因になっています。

冷蔵庫は見せるためではなく、隠すためにできている

たとえ記憶が完璧でも、冷蔵庫そのものが協力してくれません。ドアを開けるたびに冷気が実際に逃げていくので、「見て、取って、閉める」という反射的な動作は、奥にある見慣れないものに気づくにはいちばん向いていない見方です。棚は一目で見渡せるより奥行きがあります。引き出しは構造上不透明で、野菜室なら一番上の層の下に何があるかはまったく見えません。ドアポケットや、奥のいちばん冷える棚は、たいてい冷蔵庫の中でもいちばん暗い場所でもあります。ドアの隙間から漏れる光からいちばん遠いからです。これは設計ミスというより、冷やすことを最優先にした結果、見やすさが後回しになっているだけですが、結果は同じです。ぱっと見でいちばん見えにくい場所が、物理的にもいちばん冷えていて、いちばん長く保存が効く場所であり、だからこそ人は長く置いておきたいものをそこに押し込みます。

家族で暮らしていると、死角は二重になる

一人暮らしの台所なら、不完全であっても冷蔵庫全体をカバーする記憶が少なくとも一つはあります。家族で暮らしていると、その瓶を買って奥にしまった人だけが、それを記憶している唯一の存在になりがちです。今週料理をするのがその人でなければ、他の誰にもその不完全な記憶すら残っていません。忘れたのではなく、最初からそこに何もないのです。これは、このサイトが以前「買い重ね」のところで取り上げたのと同じズレです。「家に何があるか」はもともと複数の頭の中に分かれて存在していて、そのどれもが他の二つの最新状態を知りません。ここではそれが逆の形で表れます。すでにあるものをもう一つ買ってしまうのではなく、一つのものが誰にも使われないまま無期限に居座り続け、それを知っているのはただ一人、しかも今夜の献立を決めている本人ではない、という形です。

「もっとよく探す」が解決にならない理由

いちばんもっともらしく聞こえる助言——冷蔵庫の奥をもっとちゃんと確認する——は、実は人がなかなかできないことを求めています。存在すら知らないものを、意識して探すことはできません。それこそが「使っていない」ではなく「忘れている」という状態の正体です。どれだけ丁寧に見渡しても、目は結局、目に入ったものを認識することしかできず、目線は自然と手前の、視線の高さにある、明るい場所に落ちます。「もっと気をつけて」と言うのは、実質的には、作業記憶そのものの限界を意志の力だけで乗り越えろと言っているのに近く、それは忙しい一週間を一度も乗り切れません。意志の力に頼った期限リマインダーアプリが一か月で使われなくなるのと、まったく同じ理由です。

実際に役立つこと

  • 新しいものをしまうとき、古いものを手前に出す。 いちばん効く習慣はこれです。すでにあるものを手前に移してから新しいものを奥に入れることで、古いほうを実際に目が向く場所に留めておけます。
  • 冷蔵庫に「これから先に使う」専用の一角をつくる。 一段まるごとそのために空けておくだけで、冷蔵庫全体を探す作業が、決まった場所をちらりと見るだけの作業に変わります。他の場所に何が隠れているかを覚えていなくても機能するのが、この方法の強みです。
  • 記録を記憶の外に置く。 冷蔵庫そのものは、在庫を把握するにはいちばん向いていない場所です。冷気は逃げ、引き出しは不透明で、棚の奥は見通せません。ソファや、スーパーの棚の前でも確認できるリストなら、想起にまったく頼らずに済むので、この問題そのものを回避できます。
  • そのリストを一人のものではなく、家族全員のものにする。 共有された記録があれば、この問題のいちばん弱い部分——その瓶の存在を知っているのがただ一人で、しかも今夜料理する人ではない、という状況——がなくなります。

これはまさに Munch が埋めようとしているズレです。何かをしまうたびに、保存場所——冷蔵、冷凍、常温——が記録され、家族全員が同じリストを見ます。しかもそのリストは使うたびに更新され、それぞれの頭の中で少しずつ古くなっていく記憶とは違います。奥にある瓶は、もう誰かの記憶だけに頼る存在ではなくなります。最初から誰か一人の頭の中だけにあったわけではなく、リストの上にあり、アプリを開いた人には、それを買った本人でなくても、いちばん先に使うべきものとして表示されます。

これは記憶力を鍛える話ではありません。冷蔵庫の奥は、これからも変わらず冷たく、暗く、手が届きにくい場所であり続けます。それに知恵で対抗しようとするのは、そもそも方向が違います。本当にやるべきなのは、記憶にできないはずの仕事を記憶にやらせるのをやめて、答えを実際に目で見える場所に置くことです。